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PHOTO:益永 研司

島根県松江市

ワンマウンテンハウス

2012年 リフォーム


第17回エコ電化住宅コンテスト リフォーム部門 最優秀賞受賞

冬に訪れると、いつも薪ストーブの前に吸い寄せられる。

腰を下ろし、土間に足を突っ込む。火を眺めるのが好きだ。世間話や近況を報告しあうそのひと時が、持ち合わせた微かな緊張をほぐし、あの時のような距離感が戻りはじめる。

まだ、何も作っていない僕に依頼してくれたこの家族の勇気に、今も敬意と感謝を抱き続けている。僕にとって代えがたい特別な家族のひとつである。

この家には仲の良い5組の家族が遊びに来る。20名は超える数が一同に介する場所を求められた。広いキッチンと寝室を隔てる扉を開放すれば、大きなワンルームになるよう計画した。薪ストーブと約14畳の屋外デッキは絶対で、そこには常に人がいる。

この住宅に教えられた事が2つある。

1つは、出来たばかりの建築は面白くない、ということ。この家族の日々の生活や息吹がより建築を芳醇なものへと仕上げていく。その過程を何年にも渡って、見させてもらった。

もちろん、今も見させてもらっている。

2つ目は、建築家の存在感は、4割以下で良いということ。竣工後、室内を見渡した妻が「この家は、○○ちゃんの顔が見える」と言った。

続けて、僕の顔が見えないと言った。従来の建築家はこの言葉を聞いてきっと落ち込むだろう。

目の前に、道が見え始めた。

まだ道のない状態で立ちすくむ僕に寄り添い、うっすらとその先を示してくれた住まいである。

チャイアーキ一級建築士事務所
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