裕之 安井

2020年6月22日3 分

2018 掲載

最終更新: 2021年10月28日

帰還6 DOORbooksが毎月発行している本に、

「コロナ禍に何を思ったか」について

僕の書いた文章を掲載して頂きました。

帰還という本は、高橋さんが短編小説と

エッセイを綴る内容なのですが、

6月号では、高橋さんの身近にいる方たちに

執筆を依頼し、付録という形で掲載されています。

執筆者(帰還6に掲載された順)

山本美文(木工家 岡山市)

安井裕之(建築家 松江市)

小倉健太郎(宮内舎代表 雲南市)

安部太一(陶芸家 松江市)

斎藤陽子(CALMS主催者 米子市)

ご興味ある方は、下記へお問合せ下さい。

DOOR BOOK STORE

https://www.instagram.com/doorst.margaret/?hl=ja

帰還6 Platz 読者の広場に掲載された文章を記します。

顔が穏やかになったね、と妻に言われたのは何日だっけ?

今年の初めではなく、コロナで自粛生活を送っている5月の半ばだった気がする。

「えっ」と不意をつかれ、あとから少し嬉しい気持ちになった。

いつも、あなたは顔が恐いと妻や友人Fから言われ続けていたから。

一体なんで穏やかな顔になったんだろう?

思い当たる節は、自粛生活後に始めた3つのこと。

1つは髭を伸ばし続けたこと。ウィルスが口に入らないよう、口髭や顎鬚が防いでくれると半ば信じたから。

2つ目は、利き手ではない左手で、ご飯を食べられるようになったこと。

     散歩と一緒で脳を活性化してアイディアが出やすくなるそうだ。

     でも散歩は止めてしまった。

3つ目。仕事をしていない。

いや、厳密に言えば仕事はしていた。

ただこの仕事が再開されるのか、このまま音沙汰もなく1年が経つじゃないだろうか、いや、実はそうなって欲しいと思っていた。

このまま世界の流れが止まり、ただウィルスに怯えながら何もせずに1年を過ごす。

想像しただけで、何だかほっとして、そうならないかなーと思い続けていた。

こう書くと、本当に何もしてない人だと思われそうなので、書く。

実際は気のままに仕事はしていた。

敷地模型を作ったり、既存図面をCAD化したり。

ただし、気分が乗った時に進める感じで、1日2時間の時もあれば、6時間の時もあった。

それでも1日は早かった。

何をしていたかといえば、コロナに関する情報を集めたり、子どもの勉強を見ながら本を読んだり、子どもと一緒に散歩に出たりした。手紙も書くようになったし、大切な人と電話をし、会話する大切さをあらためて感じたりもした。

仕事は辛い。

いつもその事を思うと、胸が締め付けられる。

大雨や地震、台風が来ると今まで携わった住宅が頭に浮かぶ。

極度の心配性だと思うし、そんなの気にしてられないって言う人もいるだろう。

でも、どうしても頭に浮かんでしまう。

そして嵐が過ぎ去るのを待とうとようやく納得する。

今更、どうしようもできないからだ。

その時々でベストを尽くしたじゃないか!と自分自身に確認しながら、寝てしまう。

振り返ると、仕事を忙しくし過ぎていたのかもしれない。

周りには、お前は仕事をしなさ過ぎと言われながらも、自分なりに切羽詰まった状態だったのだろう。

気が焦り、早くこなそうと無意識に動いていたのかもしれない。

打合せを見合わせていた仕事が再開し始めた。

また恐い顔の僕に戻るのだろうか?

それとも上手く受け入れ、違う顔に変わっていくのだろうか?

妻の表情や言葉に注目したい。

早速、髭は全て剃った。

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