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2031 人新世

執筆者の写真: 裕之 安井裕之 安井

更新日:2021年10月28日


建築雑誌が面白くない。

ワクワクしない。


と言うと、


建築雑誌に掲載される建築家になってから批判しろ!

選べる立場にないだろう、と言う方もいるだろう。


その意味も分かる。

分かるから、公にしなかったけど、

その前に僕は読者でもある。


皆さんも薄々気付いているだろう。


20年前の建築雑誌をめくって欲しい。

きっと面白いと感じるはずだ。


僕自身、今の時代は、「良いモノ」を作るのが難しいと思う。

その只中にいて、作る難しさを実感している。


建築雑誌に載ると言う意味を考えれば、

一つしか思い浮かばない。


建築関係者へ向けたメッセージだ。

政治家で例えるなら、当選回数を誇る、あれだと思う。


そういう意味で、中村好文は対称的で

彼は早くからそういう建築業界を向かず、

広い世界を見ていたのだと腑に落ちる。



最近、人新世の「資本論」:斎藤幸平著 を読んだ。

(人新世:人類が地球を破壊しつくす時代を示す)


資本主義は、一部が富み、その周辺国から搾取する事で、

一部がどんどん大きくなり続ける、止まらない世界である。


競争と書けば、公正なイメージを持つかもしれないが、

例えばユニクロにしても、コーヒーにしても、チョコにしても、

生産者は、それを口にした事すらない事実を聞くと、どう思うだろうか?


アボカドの話は衝撃的だった。


アボカドは南米チリで輸出向けに育てられている。

多量の水を必要とする以上に、土壌の養分を食い尽くす為、

一度生産すると、ほかの種類の果物など栽培は困難になる。


水は、大干ばつに襲われると希少性を増す。

希少性は資本主義の大好物で、水さえもお金になる。

南米チリは大干ばつに襲われている。

水は手洗いに使えず、アボカド栽培に使われる。

このコロナ禍に、日本では考えられようか?


気候変動は富のある欧米や日本のような国より

真っ先に周辺国が被害に晒される。


何度も言う。

資本主義は、富む国が大きくなり続け、周辺国を食いつくす。

そのような資本主義の世界では、気候変動や環境破壊は止められない、

そういう警告を発する本である。


ではどうしたら良いか、そのヒントはバルセロナの試みや

ヨーロッパが中世で培ってきた文化、

日本で言えば、江戸時代の生き方にヒントがあると思う。


斎藤幸平は、1970年代に生活を戻すだけで良いとも書く。



僕は建築を作る事で仕事としている。

ある意味、僕のような職業は、資本主義が作ったようなものだ。

恩恵も受けているし、矛盾を抱えながらも、生きている。

少しでも良い世界になるように、日々思う。



さて、前の話に戻すと

建築家の書いた文章や対談の言葉が、どれも面白くない。


全部、途中で投げ出してしまう。

何故なんだろう?


ある構造家がインタビューで、

『近い将来二酸化炭素の排出量を極端に抑えた状態で

ふんだんにエネルギーを使える時代がくるかもしれない』と

嬉しそうに話す文章を読む。


斎藤幸平の著作を読んだ後だからか、

この言葉にむなしさを抱いている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


駄目な詩人がいっそう駄目になるのは、詩人の書くものしか

読まないからである。(駄目な哲学者も同じこと)


植物学や地質学の本の方が、はるかに豊かな栄養を恵んでくれる。

人は、自分の専門を遠く離れたものに親しまないかぎり、

豊穣になれない。


「生誕の厄災」エミール・シオラン著より抜粋


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