• 安井 裕之

2036 コンペティションについて思うことを書いた



先ず始めに、次の文章を読んで下さい。



  すぐれた建築に与えられるある賞の応募作品が、私たち審査委員の前に並べられている。

  私は田舎にある一軒の小さな赤い木造家屋の資料をじっくりと検分する。納屋を住宅に

  改築したもので、建築家と住人が共同で増築をおこなった。うまい増築だ、と私は思う。

  切妻屋根の下の身部はどこを増築したか見てとれるが、違和感なく造られていて、全体

  として統一感がある。(抜粋)新しい部分は「自分は新しい」と主張するのでなく、

  「自分は新しくなった全体の一部だ」と言っているかのようだ。センセーショナルでも

  革新的でもない、目を射るようなものはなにひとつない。設計の手法からすればどちら

  かといえば旧式の、職人的な取り組みである。設計賞はやれないだろう、ということで

  私たちの意見は一致する。賞を与えるには、建築としての主張がおとなしすぎる。にも

  かかわらず、私がしばしば好感を持って思い出すのは、この小さな赤い家なのだ。


          ( 「建築を考える」ぺーター・ツムトア著 鈴木仁子訳 より )



僕が目指すのは、「小さな赤い家」だ。


コンペで選ばれるような建築を目指して作っているわけではない。

それでも、あるコンペに応募し続けていた。


そのコンペは、「小さな赤い家」に賞を与える稀有なコンペだったと思う。

そう信じて疑わなかったから、応募し続けたのだと思う。


審査員は変わらずとも、

少しづつコンペの内容が変わっていた事に気付かなかった。

そして毎年、負け続けた。


ようやく今年になって、目が覚め、

コンペについて考え直すようになった。


そこで思い出したのが、冒頭の「小さな赤い家」である。


もし万が一、コンペで賞を貰っていたら、

きっと僕のことだから、勘違いしただろう。


調子に乗り、賞と製作と目指す方向のギャップに悩まされていたと想像する。

今も、これからも「小さな赤い家」を目指したい。



















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