裕之 安井
2041 素直になりなさい

3年前に初めて連絡を頂いた住宅の工事が、ようやく始まろうとしている。
打合せを本格的に始めたのが、コロナで騒がれはじめた時で、
重苦しい月日を共に歩んだ感が強い。
依頼主は、歩いて10分の場所に住むクライアントで、
近所の知人を介して連絡を貰った。
自分の住む地域では、僕がどんな仕事をしているか
興味もないし、知らないと思う。
僕自身も声高く言うタイプではないし、
法律で決まっている看板設置も、言われて初めて気付く場所に置いている。
愛媛県宇和島市に大竹伸朗という画家が住んでいる。
奥さんの実家に30代の時に、移住した。
芸術家界隈では、都落ちしたと言われたそうだ。
僕の好きなエピソードがある。
大竹:夜ごと、地元の人にスナックに呼び出されるんです。呼び出す方は、別に美術な
んかに興味がない。そこにあるのは、こいつと付き合うかどうかってところの判
断ですよ。
大竹:カラオケで歌えとか、ね。その ” コンセプト ” は通用しないわけ(笑)。ポリシー
とかね。そんなもんはクソだと。お前の考えなんかはクソだから歌えと。そこで
は ” 主張 ” とかは関係ないのよ。
大竹:ある時期から、呼び出しがあったら展示会の前の日だろうが、明日の朝の状況が
どうだろうが、そこに駆けつけると(笑)。そういうふうに決めたわけ。電話がか
かってきたら、これは運命だから行くぞってね。締め切りだろうがなんだろうが、
そんなことは無視して、不意の出来事って言うのかな、それが一番大事だと(笑)
そういうふうに決めたら、楽しくなってきたよね。
(宮島達男編 アーティストになれる人、なれない人より)
この話がとても好きで、時折思い出す。
ただその地域の人と共に過ごす。
僕自身、時間に余裕があるので、小学校の事や
スポ少の活動に関わったりしている。
その中で、自分を見つけ、
依頼してくれたクライアント。
紆余曲折あり、住まいは、ご近所ではなくなるけど、
住んでいる地域からの初めての依頼に、嬉しい反面、今は、不安がつよい。