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執筆者の写真裕之 安井

2066 意図しないこと





集合住宅の設計依頼があった。

昔からの知り合いで、施工者である。


咄嗟に、自分は一人で仕事をしていること、

手元には検討しなくてはいけない住宅を抱えていること、

それらを伝え、やんわりと出来ない旨を伝えた。


色々な感情があったが、ここでは書かない。

ただ家族に話すと、「なんで断るの?」と言う。


旧知の現場監督に相談すると

「安井さんがする仕事ではないですね」と。

ほっとしつつ、

この件は頭から離れなかった。


12日後、幼馴染からある仕事を依頼された。

仕事の規模は、上記の仕事とは比べ物にならないくらいに小さい。

(以前も書いたけど、仕事の大小で選んでいない。どちらかと言えば大は避けてるかもね。) 


設計監理料も多くない事が予想される。

それでも、僕はこの仕事がしたい、と思った。


デザインする要素はない。

どちらかと言えば、クライアント側がスムーズに

やりたい工事をトラブル無く終えること。


今日も来週もショールームへ行き、最低限の住まい方を提案する。

使えるものは使い、交換するべき所は、交換する。

なるべくお金をかけない。


コミュニケーションやコストコントロールを

自分の仕事の主に置く。



昨日は 著名な陶芸家から

垂木が腐っているから見て欲しいと連絡を受け

見に行ってきた。


周りに声を掛ける人は沢山いるはずで

その中でも僕に声を掛けてくれた事に

心が弾む。


最後に、陶芸家の作品を見せて頂く。


前から仰っておられたけど、用途をなさない陶芸品を作ることに

興味があるみたいで、数点見せて頂く。


どれも遊んでるなーと感じる作品で

陶芸家の作る喜びが伝わってくる。


昨年のとある展示会で見た作品に目がいく。


形は、

何と言ってよいか分からないけど

神主の持つ笏(しゃく)のようにも見える。

(次女が手に持って、神主のマネをして遊んでいる)


子どもが押したような〇△◇等の判が

表面に隙間なく押され、飴色の釉薬で覆われている。


小口は、どこからか掘り出したかのように、

ギザギザで粗く、触るとゴツゴツしている。

焼き締めた地層の断面を見ているような心持ちがする。



僕は仕事の合間に

この笏のような形の作品を

握り締めては、感触を確かめ、じっと見つめる。

ここには、意図なんて入っていない。


でも絶対にどこかで、この形で良しとしたはずの

陶芸家の意図があるはずなのに、見当たらない。


意図のない形。

意図のない仕事。


陶芸家との仕事が楽しみでもあり、プレッシャーを感じている。

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