
前回の続きで、建築家の仕事を疑似体験して貰った話。
建築家の仕事はそれぞれのやり方や様々な方法があるので、
この話は、
僕が普段している仕事を指します。
僕がクライアント役をします。
約50名の学生は、建築家役をしてもらいたい、
と伝え、
席をシャッフルさせて、普段話をしない相手と
ペアを組んで貰いました。
一つ目のポイントは、ここです。
普段話をしない相手と協力して
依頼内容を話し合い、アイディアをまとめて貰う。
初めましての人は、ひょっとしたら
自己紹介から始めたかもしれませんし、
顔見知りの人は、何か共通項をお互いに探ったかもしれません。
僕の仕事は、
このようなコミュニケーションで全てが始まります。
それを体験してもらうのが、大事だと考えました。
クライアントの依頼はこうです。
「宍道町に本屋を作りたい。設計を依頼したい。
ただ、1点だけ考えて欲しい事があって、
小さな子どもから大学生までが、気軽に来てくれて
居場所となるような建築を作って欲しい」
そこからペアで話し合って貰います。
クライアントは、依頼をしてるけど、
ほとんど情報を建築家へ伝えていません。
新築なのか?リフォームなのか?
予算は?宍道町のどこで?とか
ポイントの2つ目は、
建築家たちは、クライアントへ質問して欲しいことでした。
初めは皆 そこに気付かず、
ペアでの話が盛んに行われていましたが
ポツポツ手が上がるようになります。
質問と答えは、皆で共有しましょうと
最初に話していたので、静かに聞いてくれます。
質問の答えによっては、より活発に話をするペアもいて
全体的に楽しい雰囲気の中で授業ができたのではないかと
思っています。
最後に
なぜ疑似体験ワークショップをして貰ったのか
お話しました。
まず提案内容はそんなに重要ではなくて
ペアを組んた相手と とことん話しあい、2人で結論を出す、
そのプロセスが重要だということ。
ほとんど話をしたことない相手は、
普段僕に仕事を依頼してくれるクライアント達がそうで、
そこから話を始めていること。
異なる価値観に出くわしたとき、
物おじせず、卑屈にも尊大にもならないこと
粘り強く共有できる部分を見つけていくこと
そうした対話を繰り返すことで
出会える新しい発見や出会いの喜びがあるんだ、
という事をお伝えして、授業を終えました。
(参考:『わかりあえないことから』平田オリザ著)
僕の仕事は、これに尽きると思っています。
上手くいった仕事は、話し合いのプロセスが素晴らしくて
その結果、出来上がる建築も良くなったに過ぎないのです。
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