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  • 執筆者の写真裕之 安井

2045 津和野

更新日:2022年7月30日



長女・蒼が3月に中学を卒業し、今日から津和野高校へ進学する。


中学生活の中で、松江を出たい思いが強くなったのだろう。

中学3年の春には進学したい高校を2校に絞り、自分で決めた高校を受験した。


金銭的な事を考えれば、松江市内の高校に通ってくれた方がありがたい。

金銭的な不安はあるけど、僕らの覚悟が必要な話でもあった。


津和野は僕にとっても思い出深い地だ。

広島工業大学大学院1年の時、ある事をきっかけに研究室を飛び出した。

そのまま歩いて駅へ向かった。

行先は決めてなくて、山口へでも行くかと思い、鈍行列車に乗った。


山口を周り、萩に辿り着き、

松江からは行く機会のない津和野が近いと分かり、

憧れだった津和野へ進路を向けた。


街中をぶらぶら歩き、城址にも行ったし、

当時の津和野高校の吹奏楽部が、雑木林の中で練習していて

その姿に惹かれ写真を撮った記憶がある。


安野光雅を知ったのも、この時で、

広島へ戻ってから友人に貰った安野光雅の絵本は

我が子に受け継がれた。


当時、津和野にオーベルジュが出来て、興味があったけど

とてもじゃないけど行けなかった。


でも今回、蒼の進学をきっかけに

家族で泊まる事ができた。


憧れだったオーベルジュへ家族と泊まることが出来たなんて。

20年前の自分は、信じられただろうか。


僕は入学式には参加しない。

松江で次女が一人になるからだ。


津和野は松江から車で約4時間ちょっと。

制服など事前準備の為、昨日、出発していった。


その日僕は、今年の晩夏から始まる工事の打合せで

先に出なければならなかった。


蒼に何て声を掛ければ良いのか考えると、こみあげてくるものがある。

ぐっと堪え、「いつでも帰っておいで。父さんは仕事に行く」と言って車に乗った。


車を走らせる。

家からどんどん離れていく。


目的地へ近づくにつれ、涙が止まらなくなった。

「あの子なら大丈夫、あの子なら大丈夫」と、つぶやく。

自分に言い聞かせるために。


意識しないといつの日か忘れてしまうこの日。

休みになると帰ってきて、また家を出ていく。

この繰り返しが当たり前になり、感情も慣れていくだろうと想像する。


僕はこの日を忘れたくない、と誓う。

自分に言い聞かせるために。

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