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  • 執筆者の写真裕之 安井

2050 その時は引退しよ、


14時に現場へ見に来て欲しい。


職人たちが勢ぞろいしてこちらの様子を伺う。

僕は、その箇所を見たくない気持ちを持ちつつ、

客観的に、そろりと視線を向ける。


沈黙。


別の所へ視線を向ける。


そしてもう一度、懸念の箇所を見る。

変わらないよなーと思いつつ、沈黙。


どうですか?と声が掛かる。

正直に言う。

変わらないかなー、と

正直に言う。


ひとりの職人は何も言わずに、どこかへ行ってしまった。

若い施工スタッフは、苦い顔と驚いた顔を一瞬だけ見せた。


自分にとっても初めて経験する工事。

施工する側も同じで、経験がない難しい工事。


仕上げ工事が始まるまで、そのような問題が起きるなんて

思いもしなかった。

難しい工事だなんて、その時初めて直面した。


クライアントからは、「そのままでOK」の話は出ている。

もうこれは、クライアントの問題ではなく

僕と施工者の「納得いく仕事が出来ているか?」

それだけになった。


その上で、期日は永遠にあるわけではないし、

何度もやり直すのは、現場の士気にも関わる。

やり直すのは、次の1度だけで終わらなければならない。


その反面、もし基準通りの内容が得られなくても

それはそれで良いじゃないか、とも思う。


自分で考え、時には様々な職人に相談し、最適解を判断する。

今の自分の持っている知恵、経験、そして施工技術を

精一杯やった上で、上手くいけば良いし、

上手くいかなくても、この経験や考えは、次に必ず通じる。

『そこまでやったのだから』と思えるところまでやりたい。

(クライアントがOKと判断した上で、が 前提です。)


歳を重ねるにつれて、この判断が出来なくなるのが、恐い。

その時は、引退しよ、って思っている。



ちなみに2点ほど書く。


仕上りに不満がある時、それは「僕のわがまま」だと思っている。

わがままに、施工者は身銭を切る必要などないと思っている。

勿論、クライアントも。


なので、僕は職人に直接請求書を送ってくれるように依頼する。



不安そうな若い施工スタッフには、

「落としどころを決めているので心配しないで欲しい。次で最後。」

「今、ここで出来る事を精一杯するのが、必ず次に繋がる」


その事を個別に伝えてある。


これから一緒に職人と、仕上げを剥ぎに行ってきます。




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