2093 令和6年度「ウッドスタイルコンテスト」優秀賞
- 裕之 安井
- 4 日前
- 読了時間: 3分

令和6年度「ウッドスタイルコンテスト」に応募し
優秀賞に選んで頂いた。
受賞作は、「西持田窯の家」
ヒノキ板を水平方向に張り、
板と板の間に陶土を詰めて仕上げた壁を主につくり
30年前の住宅を部分的にリフォームした作品である。
この住宅は以前、2052水のない住宅 に書いた。
この受賞を一番喜んでくれたのが、
現場監督の小松さんだった。
彼と出会ったのは、2018年で
今から振り返っても幸運な出会いだったと思う。
現場で一緒に働くと、人となりが分かってくる。
彼は、くそが10回くらいつく真面目な人間で
設計者と共に、いやそれ以上に悩んでくれる。
危うい納め方や職人の不得意な所を設計者に伝え
本当にその設計で良いか、柔らかく問い詰める。
その裏で、僕には見せない施工図を描き
一度自分の身体に入れて、現場に入っていると
懇意の大工さんに教えて貰ったことがある。
僕は全てをコントロールしたい建築家ではなく
僕にとって大事な所以外は、現場に任せたい。
そんな時でも、小松さんは遠慮気味に言う。
「え、安井さん、そんな納まりで良いんですか?」と。
任せた結果、僕には思いもよらない答えが
驚きや喜びをもたらしてくれる。
つくづく建築は、協同作業だと思う。
僕は、小松さんの美しさを好む姿勢にいつも感服する。
いつからか、『小松美学』というようになったそのセンスは、
僕よりも遥かに要求が高く追及しているように見える。
「こっちの方が美しくないですか?」
「そんなんで良いんですか?」と
聞いてくる現場監督に、今まで会ったことがない。
「小松さんが言うなら、そうしよっか」
僕の返事はいつもこうだ。
「西持田窯の家」は、小松さんと石橋大工の力作だ。
ヒノキを積層させず、隙間を開けて張る。
コーナーは、同じ板目で張り回す。
2年経っても、突きつけた板は隙間すらない。
工芸品を見るかのような仕事をして下さった。
(小松さんエピソードは沢山あるけど、またの機会に)
その小松さんが現在勤めている会社を退職する。
1年前から相談してくれて
彼の中で、この業界から離職することも選択肢にあったみたいだ。
僕は、止めた。
彼以上の天職をもった現場監督は居ないからだ。
それはどの職人に聞いてもそうで、
口をそろえて「あんな監督さんに会ったことがない」という。
複数の職人が言うから間違いはない。
ただ正当な評価を社会や会社から受けていないように思う。
小松さんは、もっと認められて良い人だ。
一切、手を抜かない、気を抜かない監督を見たことがない。
令和6年度「ウッドスタイルコンテスト」の事務局から
賞状が1枚だけ送られてきた。
A4サイズで木の皮を薄くスライスした上に印字されたものだ。
僕は、藤原将史に頼んでウォールナットの額装を譲り受け、
賞状を嵌めて、小松さんへ贈呈した。
受賞もそうだが、賞状にも喜んでくれた。
きっと彼は、
家族が見える場所に
この賞状を飾ってくれているだろうと
想像する。
一人息子にも自分の仕事を説明したかもしれない。
そんな光景が浮かぶような人だ。
幸い、小松さんは、次も現場監督として再就職する。
小松さんの
「こっちの方が美しくないですか?」を
また聞きたい。